ピックアップトラックの重要なお知らせ
リポートはこうした材料を提供しながら、世の中で広がっている「TタとN産の業績格差はどんどん聞いている」というイメージの修正を試み、ある程度成功している。
しかし、逆にショックを受けた投資家も多かったに違いない。
「N産とTタは10年前から、こんなに差があったのか」と気付かされたからだ。
N産の利益の背の高さがTタより常に4000億円分低いと表面上に顔を出すのは、市場全体が好況のときだけなのではないか。
こんな疑問もわいてくる。
セールス強化に挑む不況の本質を誤解94年度当初、N産は「上期に600億円の経常赤字となるが、下期に600億円の黒字を達成し、通期でトントンを確保するL(H専務)計画だった。
だがフタを開けてみると、上期の赤字額は実質900億円超に膨張、下期も結局、黒字は達成できず20億円強の赤字に終わった。
大規模なコストダウンを進めながら、計画通りの利益を上げられない最大の理由はなにか。
それは計画通りクルマが売れないことだ。
N産の問題は何よりもまず、国内販売にある。
「年度後半の飛躍にそなえて、上期は身を低くしなくてはならない。
上期に思い切った在庫調整を実施します」94年5月31日、93年度(94年3月期)の決算発表の席上、H専務(当時常務)は94年度の見通しについて、こう語った。
在庫調整の規模は6万台。
月間販売台数のほぼ7割にあたる。
6万台の在庫を6カ月間で減らすということは、平均月1万台の削減。
在庫を掃くためには、これだけ生産量を減らす必要があり、N産の生産現場にとってはかなりの痛手となる。
にもかかわらず、ここここに至るまでの販売不振は、マクロ的な自動車不況はもちろんだが、N産のマーケティングと消費者の志向の食い違い、すなわちN産の経営判断ミスによるところが大きい。
すでに、93年夏発売の新型「Sイライン」は高級車路線に振りすぎ、スポーツカー・ファンの不評を買っていたが、94年1月発売の新型「サニー」は逆にスポーティー・イメージを強め過ぎ、大衆車購買層の広い支持を得ることができなかった。
高めに価格設定(旧型より4万円高)したこともあり、いきなり販売目標を下回った。
国内販売の最高責任者、F大至副社長(当時、94年5月退任)は、自動車不況の本質を誤解していたようだ。
同副社長はこんな「語録」を残している。
「売れているイメージを作れば、本物の需要は後からついてくる」。
Sイライン発売後の数カ月間、月販台数が目標の8000台を上回るようディーラーにプレッシャーを与え続け、無理な販売を強いた。
「多少無理しでも、数カ月間目標を上回って売れ続ければ、雑誌や新聞に『Sイライン好調』という記事が載る、だろう。
そうなれば消費者は『それほど売れているなら、ひとつ自分もSカイラインにし,てみるか』という気になるだろう。
その結果、実際に販売台数が上向くはずだ」同副社長はこんな展開をもくろんでいたわけだが、現実にはこうならなかった。
N産から系列ディーラーにクルマが押し込まれ、ディーラーの在庫は膨張。
在庫調整に踏み切る直前の94年3月末、ディーラー優先路線へメーカーが強く、よい製品ができれば、よく売れる。
ディーラーはもうかり、メーカーももうかる。
これは当たり前の話だ。
しかし、得てしてそうはならないのがビジネスであり、経営者の手腕もここで問われる。
たとえばN産のように、製品が売れず、メーカーもディーラーも窮地に陥った場合どうするか。
まず、よい製品が生まれるように、メーカーの立て直しを急ぐのも一法。
もうひとつの方法は、販売力が増すように、まずディーラーを強化することだ。
94年5月末にF副社長が「M資金スキャンダル」で突如退任した後、国内営業の最高責任者となったT専務は、後者の道を選んだ。
「技術のN産」と自らを位置付けてきた誇り高いメーカーにとって、大きな路線転換だ。
ディーラー支援は短期的には、メーカーの収益を圧迫する。
流通在庫削減のための生産調整(工場の一時帰休)もそうだが、ディーラー経営立て直しのため、資金的な負担も大きい。
N産の94年9月中間決算の減益要因のうち、販売減によるものが700億円分あったが、このうち200億円分は販売費用の増加によるものだ。
ディーラーマージンを積み増したり、インセンティブ(リベート)を増やすことで、販売店の経営改善を狙った事実上の損失補てんとみられる。
94年度を通じての販売費用増加は400億円に達した模様だ。
もう一歩踏み込んだディーラー支援もある。
系列ディーラーの株式取得だ。
N産は94年上期、系列ディーラーの株式を85億円買い増した。
有価証券報告書によると、92年度に約340億円、93年度にも約280億円買い増している。
これはディーラーが累積赤字解消のために実施した増資を、N産が引き受けたものとみられる。
自動車業界が毎年注目している「ディーラー申告所得調査」(「週刊Dヤモンド」調べ)によると、93年度に利益4000万円以上を稼いだ「所得ディーラー」の数は、N産系の場合、全27社のうち54社しかない(前年度は72社)。
これは系列販社の4分の一強にあたり、残る約4分の3のディーラーは利益がほとんど出ないか、赤字ということになる。
所得ディーラーの数はTタ系の1097社(全体の6割強)、M菱系の189社(同6割強)に比べ見劣りする。
自動車業界では、セールスが弱くなると、メーカーと系列ディーラーの資金的な結合が強くなる傾向がある。
クルマが売れないと、ディーラーの経営がおかしくなり、メーカーはディーラーをつぶしたくないため、ディーラーの増資に応じるからだ。
もともと地場系だったディーラーも、増資を繰り返すうち、いつの間にかメーカー直営になってしまう。
Tタ系とは対照的に、N産系ディーラーはメーカー直営が多い。
地場系とされるところでも、N産自動車が一部出資する販社が多い。
これはN産の販売が弱く、メーカーが長年にわたってディーラー株式を取得せざるを得なかった歴史を示している。
これが長年の「メーカー優先路線」だとすると、94年度から採用した「ディーラー優先路線」は、販売弱体化の歴史を断ち切るきっかけになるかもしれない。
ディーラーをもうけさせることが下手なメーカーは弱体化する。
この当然の事実にようやく気付高コスト体質の改善を量販上級車の不振の結果によるもの収益低迷には、台数の減少もさることながら、車種構成の悪化が効いている」。
94年12月20日、辻義文社長は年末恒例の記者会見で経営不振をこう総括した。
N産全体の国内販売台数はもちろん大きく減っているが、そのなかでも、とくに高級車の売れ行きが落ち、価格の低いクルマの比重が増えた。
これが赤字幅拡大の要因というのだ。
N産は大は「プレジデント」、「インフイニテイ」から、小は「マーチ」まで幅広い車種を生産している。
最大クラスを小さくなるにしたがって、分類すると、94年の量販上級車最小をSS、というように6利益貢献度の大きいLL、Lの販売不振が目立つ。
代表的なモデルで、93年と94年の売れ行きをみてみよう。
の国内販売はいずれも不振で、6モデル合計では前年比6%減の21万9800台弱。
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